「恩智川クリーン・リバー・プロジェクト」(大阪府・恩智川流域4市) | 公益社団法人食品容器環境美化協会
アダプト・プログラム

アダプト・プログラムの事例紹介


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2014年5月

「恩智川クリーン・リバー・プロジェクト」(大阪府・恩智川流域4市)

河川清掃においては、「下流をいくら清掃しても、上流からごみが次から次へと流れてくる」という話を聞くことが多いのですが、大阪を流れる恩智川では、ポイ捨て等の問題に対し、市民が主体となり、流域全体で「何が問題なのか」「どうしたら解決するのか」を考え実行する「恩智川クリーン・リバー・プロジェクト」が実施されました。

現状・問題

恩智川は、柏原市の高尾山麓に源を発し、八尾市および東大阪市を北上、大東市の住道駅前で寝屋川に合流します。
恩智川流域において12のアダプト団体が熱心に美化活動をしていますが、一方で、場所によってはたくさんのゴミが流れ着き、住民に不快な想いを与えています。

 

■ 恩智川MAP(外部リンク)

ワークショップ概要

恩智川にたまるゴミを撲滅するため、アダプト活動団体をはじめとした住民と周辺大学の学生、行政からは大阪府、流域4市が協力し、ワークショップを行いました。

ねらい:『地域の皆さん・行政それぞれが、 できること・得意なことを、お互い認識しながら、互いの強みを活かし、協働体制を作っていくこと』
会場:流域4市(大東市・東大阪市・八尾市・柏原市)それぞれに設置
参加者:延べ約400人(沿川自治会、地域や府内で美化活動をしている方、大学生)
全体コーディネーター:大阪産業大学 檀上先生
ファシリテーター:行政職員 (大阪府・大東市・東大阪市・八尾市・柏原市)
期間:平成25年11月~平成26年3月 (月1回開催)

 

主なスケジュール

テーマ・検討内容
11月 第1回 恩智川のごみ問題が抱える課題・対策
12月 第2回 恩智川の魅力抽出。美化意識を広めるためにやりたいこと。
1月 第3回 一斉美化活動での活動内容検討①
2月 第4回 一斉美化活動での活動内容検討②
3月 3月16日 一斉美化活動
第5回 一斉美化活動の振り返り。今後チャレンジしてみたいこと。

11月:テーマ「恩智川のゴミ問題の課題」

まず、各地域の課題抽出を行いました。課題としてあがった主な項目は下記の通りです。

・汚れた川はゴミを捨てやすい環境になっている
・川がゆるやかな流れなので、より多く留まっているように見える
・護岸が高く川面が見えない
・「自分ぐらいは」の気持ちで捨てている?
・清掃をしているイメージがない

12月:テーマ「美化意識を広めるためにできること」

清掃活動はもちろん、広義の意味での「美化活動」の視点でゴミ問題の解決方法を探ります。恩智川でのゴミ問題の課題は大まかに、「河川の汚れ」「河川の構造」「市民のモラル」「掃除のしにくさ」の4つに分けられることが分かりました。
そして、進行役の壇上先生から、これらを解決する方法・対策を考えていく主軸として有効な7項目を挙げられました。

1 : ハード整備を行う
2 : 清掃活動を行う
3 : 川のイメージをよくする
4 : 川で遊んで川に親しむ
5 : 環境教育を行う
6 : 市民の美化意識をサポートする
7 : PR・啓蒙活動

それぞれが独立した考えではなく、例えば、清掃活動を親子参加型のイベントにすれば、川への親しみにつながったり、 子どもへの環境教育の場にもなる…といった具合に、ひとつの提案が別のきっかけを生む可能性も持っています。この7つの視点から、 「美化意識を広めるためにやりたいこと」の意見を各テーブルで話し合います。
最下流の大東市と最上流の柏原市では、特に流域の特徴による意見が出ました。

● 最下流の大東市は、特に護岸も高く、「親水空間」という目線を恩智川に持つ事は難しい状況ではありますが、川沿いをフラワーロードにする、ゴミアー ト、街灯を設置して安全な環境づくり、住道の駅前広場でイベントをする、といった「清掃活動」以外の意見も沢山出ていました。中でも、「小舟を浮かべて遊 べるようにする」という意見は、川の流れが緩やかである特性を良い方へ活かした案として盛り上がっていました。

大東市WS

● 最上流の柏原市では、上流にある分、他の地域より川もきれいなはずですが、残念ながら「川に魅力がない」「川としての認識がない」といった、 少々寂しい意見が出ていました。その中で「川と自分との繋がりを意識していない人が多い」。だから、「ゴミを川に捨ててしまうのではないか」という意見 も。

柏原市WS

「長期的に未来を見据えた取り組みを始めるべきだ」という意見が多くあがり、あるテーブルでは「子ども力!」と題し、子ども向けや親子向けのイベン ト、川の生物調査などを行ってはどうかと話され、またあ るテーブルでは、「歴史力!」として、まずは恩智川の歴史を知る、PRするのが大事じゃないか、と の意見も。とはいえ、やはり「清掃活動」につきるのではないか、という真っすぐな意見もあり、その際には老人会のパワーを使えば強力だから大丈夫、「老人力だ!」という非常に頼もしい意見も出されていました。

1月「活動内容の検討~3月16日の美化活動にむけて~」

1月のテーマは、「3月の一斉美化活動」の活動場所や、具体的な活動内容、参加・協力をお願いしたい人、必要とされる物品など、具体的な内容を決めていきます。
各市でWSは行われましたが、ここでは東大阪市と八尾市をご紹介します。

● 東大阪市では、一斉美化活動では、3つの公園において活動拠点とすることが決まっており、テーブルを3つの活動場所+「当日参加できないグループ」に分かれ討議が行われました。

東大阪市

「地域でやっている小学生対象の『水辺の学校』の拡大版を。大人、親子で参加できるようなイベントをする。」「土嚢づくりや水質チェック、生態調査 など、川に対する興味をもってもらうための活動を行いたい。」「今後もできる内容にしたいので、ゴミ調査をして実態をつかむことも大事なのでは?」「イン ターネットを使ったイベントの仕掛けもいると思う」等の意見がでました。
地域活動を長年続けている方も多く、広くPRするための手段や、どれぐらいの人数が適切か、掃除にかかりそうな時間配分など、経験から語られる貴重な意見も出されました。

● 八尾市では、テーブルを4つの地区に分けて行いました。こちらの会場も「掃除を中心とした活動が前提」とした上で、以下の意見が出されました。

八尾市

「リバーサイドギャラリーとして、恩智川のフェンスに子どもたちの絵をパネル化して展示を。水の浄化ができる高度処理施設の機械があるので、それを 使って、恩智川の水を飲んでもらったり。川の中で子どもを乗せて遊べるボートが欲しい。夢のあることを一緒に進めていきたい」「腕章などがあると動きやす い」「花を植えたい」前回のワークショップにおいて「掃除をするにあたって、川の整備は欠かせない」という意見があり、「こちらの地区を流れる恩智川は、高いところで 5mほどの高低差があり、これではどうしようもない。ハード面の改善をお願いしたい」と話されていました。長年この地区で川の清掃をされ、頑張ってこられ た方だからこそ言える貴重な意見。問題解決のために地域の方と行政が一緒に考えることの重要性が再確認されました。

2月「3月16日の美化活動を前に」

3月16日に実施される恩智川周辺の美化活動を前に最後の話し合いが行われました。活動内容をもとに、当日の具体的なスケジュールが組み立てられます。

3月:一斉清掃 ~『やりたいこと』を実践し、効果や課題の検証を行う~

各市の一斉清掃の様子をご紹介します。
参加者は、アドプト団体や自治会、企業の方が多かったのですが、中には、市報だよりを見て参加した方、以前から川が汚いのが気になっていた方や、良い活動なので参加してみましたという方、川沿いに設置したのぼりを見て参加した高校生の女の子たちや、散歩の途中で美化活動を目にし、その場で参加を決めた方もいました。

● 大東市

大東市

草刈りチームは9時半頃から、そのほかの方は10時から美化活動がスタート。
また、大阪産業大学吹奏楽部による演奏会や、昔使われていた「水車」や「舟」の展示、歴史資料博物館の学芸員が解説するコーナーもあり、川に関する歴史に触れることができました。

● 東大阪市

東大阪市

河川敷では空き缶やビニール、ガラスの破片などを清掃しました。
清掃後、行政の方から恩智川の歴史についてのお話や、治水場や浮遊油の駆除ネットの清掃状況についての説明がありました。また、災害時に必要となる土のうをつくる体験があり、防災についても考える良い機会となりました。

● 八尾市

八尾市

川の中に入っての清掃では、長靴を履いていても濡れてしまう方が多くいましたが、最後まで一生懸命、清掃活動をされていました。缶やビニールといった小さなゴミから、炊飯器や毛布、自転車などの大きいゴミも引きあげられていました。
そのほか、東山本小学校の生徒による「恩智川」をテーマにしたポスター展示や、アドプト団体が中心となり花の植え替えなどが行われました。

● 柏原市

柏原市

川底に降りる足場から入り清掃を開始。八尾翠翔高等学校の野球部の学生さんたちが15名ほど参加されており、意欲的に川の清掃に取り組んでいました。
生物調査では、川底のぬかるみに苦戦しながらも、仕掛けに入っていたオタマジャクシや小さな魚に興味津々の子どもたちの姿が見られました。

◎ 東大阪市と柏原市では、水質調査もおこなわれました。

柏原市の水質調査では、COD(酸素消費量)の含有量で水の汚れを大まかに知ることができる「水質調査キット」を使って、「恩智川の水」「大和川の水」「シャンプーの水(生活排水)」の違いを実験しました。予想以上の汚れに驚かれていたそうですが、現状を知ることで、美化意識の向上につながります。

感想、反省点、今後の活動に活かすためのヒント

各市とも美化活動終了後にアンケートを行いました。

 

  恩智川をきれいにしたい気持ちは生まれましたか?

恩智川をきれいにしたい気持ちは生まれましたか?

 一斉美化活動に参加して、恩智川のことが好きになったか?

一斉美化活動に参加して、恩智川のことが好きになったか?

 良かった点
  ・ 新たな試みを 参加者に楽しんでもらえた
  ・ 美化活動に新たな人が来てくれた (中学校・高校の部活動etc.)
  ・ 通りがかりの人にもPRできた(飛び入り参加、感謝の声 etc.)
  ・ 団体間の横のつながりが生まれた(自治会・環境団体・ 大学 etc.)
  ・ 川やまちのことを知ることができた(生き物・歴史 etc.)
  ・ これまで清掃できなったところが清掃できた

このプロジェクトでは、単なる清掃活動だけにはとどまらない、広い意味での美化活動といった視点で話し合いが行われ、その結果、「良かった点」に見られるような効果を得ることができました。今年度の活動は一斉清掃をもって一旦終了しますが、次年度も実施する予定とのことです。

【イベント概要】

「恩智川クリーン・リバー・プロジェクト」の詳細につきましては、下記ホームページをご覧いただくか、大阪府都市整備部河川室河川環境課までお問い合わせください。

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