( *A-A-H = Adopt a Highwayの略。)
アダプト・ア・ハイウェイの国際会議について、今回参加した12回目だけでなくこれまでの経緯も遡って報告します。
アダプト・ア・ハイウェイの発祥はテキサス州タイラーで1985年。初代のアダプト・プログラム里親参加グループはシヴィタン・グループで、彼らのアダプト・プログラムの看板の上部には「世界で始めてのアダプト・ア・ハイウェイ・プログラム」と書かれています。アメリカではアダプト・ア・ハイウェイ・プ ログラム区間の起点と終点に看板が表示されています。
アメリカでのアダプト・ア・ハイウェイの普及は、1985年にテキサス州で開始、1987年からほかの州に波及していき、5年後には39州、全50州の 内約80%がアダプト・ア・ハイウェイ・プログラムを導入しました。
ハイウェイを通っている車がプログラムの看板を見て問い合わせが多かったこと、そしてハイウェイをアダプトするというコンセプトの斬新さが普及の急速要因といわれています。
アダプト・ア・ハイウェイ・プログラムがハイウェイの最大プログラムであることを、ABA(American Beverage Association)という清涼飲料協会が実施した調査データを元に説明します。
1番目はアダプト・ア・ハイウェイ・プログラムで、導入率は100%、2番はKAB(Keep America Beautiful)というNPOが提唱・推進している美化プログラムの導入率で26%であり、アダプト・ア・ハイウェイ・プログラムがダントツで広く普及していることがわかります。
アダプト・ア・ハイウェイ・プログラムは非常に大規模に運営管理されています。州の中に配置される地域コーディネーター数は、10人以上が20%、20 人以上と40人以上がそれぞれ16%を占め、平均でも1州当たり18人となっています。
アダプト・ア・ハイウェイ・プログラムが、アメリカで非常に重要なプログラムであり、人員数も多く配置されていることがわかります。
アダプト・ア・ハイウェイ・プログラムは、日本国内 のプログラムと評価基準や導入目的が異なる部分があります。
アメリカでは、きれいにしたいという目的と同時に、州の交通局が事業清掃に替わるボランティア・プログラムによって経費を安くしたいという目的、つまり、清掃効果と経費削減効果の両面を目的として導入されています。
実施後の成果については、環境意識・公共意識の向上など多面的な効果が示されています。このあたりは、日本国内でのアダプト・プログラムの評価とほとんど変わらないと言ってよいでしょう。
・ 国際会議参加@200ドル
・ 年会費@25ドル
12回A-A-H国際会議の開催地は音楽のまちテネシー州ナッシュビルで、ポスターもそれにちなんだデザインとなっています。A-A-H国際会議はA- A-H正会員による手作り運営であり、50州の交通局のアダプト・プログラム担当者が作り上げています。毎年開催地の州も替わる。会費で運営されており、 3日間の会議への参加費が200ドル、それ以外に年会費が25ドル、そして一部 はスポンサーの負担となっています。
日本国内では県や市・町がグループを組んでアダプト・プログラムの研究会を開催している例はないと思われますが、食環協としては進めていきたい、 側面援助させていただきたいと考えています。
・ 州別に普及度の格差は大きい(MAX=州ハイウェイの80%カバー)
・ 契約更新率も州によって大きく異なる(80%~40%)
・ スピード規制との関係
・ 自宅からの距離(日常生活圏近くに) ( ⇒ city street へ)
・ 人気のある場所にはウェィティングリストもボランティアの高齢化
・ リクルート活動に制約 + 安全重視
⇒ 反射ベルト付ベスト義務化 (傷害保険なし)
・ 活動管理
・ 区間別のデータ管理
・ 応募サイト
12回A-A-H国際会議の中で、いくつか近年の動向として特筆すべき点を紹介します。
アメリカにおけるA-A-Hプログラムの活動規模は高原状態で推移しています。実際には、州ごとの普及度の格差は非常に大きく、ハイウェイの80%をカ バーしている州から、まだほとんどカバーされていない州まで格差はあるものの、全体としては高い数値で推移しています。契約更新率も州によって大きく異な り、定着率の高い州と低い州が存在します。
アダプトされている区間が徐々に州際からシフトし、例えば町の入り口を含めて中心部の方に動いています。州際のハイウェイのスピード規制が緩和されたこともあって危険なことや、自宅に近い場所で活動したいなどが大きな理由。自宅に近い場所での活動については、A-A-Hではなくアダプト・ア・シティ・ストリートとして市が導入しているアダプト・プログラムに部分的にシフトしているという情報もあります。
また人気のある場所と無い場所に差も問題になっており、人気の場所では脱退待ちのウェイテングリストができているところもあるそうです。
参加しているボランティアの高齢化も問題になっています。この点は、今後日本でも問題になってくるでしょう。
こうした高齢化やスピード規制の緩和を反映してか、反射ベルト付ベストの着用が義務化されています。
傷害保険については、食環協の調査で日本国内のアダプト・プログラムは登録している自治体や行政の約90%が保険料を負担して傷害保険に加入していますが、アメリカのA-A-Hプログラムでは導入主体は傷害保険に加入しておらず、参加者の自己責任となっています。
データベースによる活動管理・区間の管理や応募サイトの充実も、日本が参考にすべき点だと思われます。
1. 日本のアダプト・プログラムが注目された
特にその急成長に注目。日本のアダプト・プログラムがなぜ急に成長したのかなど非常に注目されました。
2. 日米の情報収集・情報交換ルート拡大
日米の情報ルートが拡大し、A-A-HのほかにKAB(キープ・アメリカ・ビューティフル)とのルートが確立し、アダプト・プログラム以外にも様々なま ち美化活動などに関する情報交換ができるようになりました。食環協では、今後もこうした動向をフォローしていき、日本の活動へとフィードバックしていきたいと考えています。
3. いろいろな工夫
アメリカではアダプト・プログラム、A-A-Hプログラムを普及させるための様々な工夫がなされています。
一つはサインボードで、新規に設置するほか、活動団体が引退した場合は里親名空欄の空きサインボードで募集などもしています。
日本にはまだ無いユニークな手法として提案したいと思います。
サインボードの上部に「10年間活動していただいて感謝しています」と書かれたペンシルバニア州交通局の感謝看板もユニークです。
テキサス州では様々なデザインの限定版のゴミ袋を出しています。
ゴミ袋はゴミの散乱対策や緑化活動の際に不可欠で、こうした遊び感覚を含めて、アダプト・プログラムの日の限定版のゴミ袋を作成すれば、参加者への話題 になる可能性があります。
オクラホマ州の感謝状は遊び感覚の最たるもので、トラッシュ・ターミネーター・アワードとして映画で有名なターミネーターにちなんだ内容になっています。
アダプト・プログラムに関する資料にも、遊び感覚を取り入れた堅苦しくないものがあります。
ウェスト・バージニア州のA-A-Hプログラムのパンフレットではアライグマのキャラクターが「ヘイ、キッズ!12歳以上はアダプト・ア・ハイウェイが できるよ!」とフランクに呼びかける内容になっており、面白い例です。
テネシー州コーディネーターのアシスタントTERESA RIPPETOEさんが12回国際会議のために「Thank you」という曲を作詞・作曲しました。 日本でも、アダプト・プログラムの歌を作って活動の前後に歌っている大阪府の事例があります。
1. アダプト・プログラムの位置づけ
アメリカ | ⇒ 合理的なハイウェイの清掃・美化手法 (A-A-H)ハイウェイ管理者が導入・一貫管理(ごみの収集含む) 費用・対・効果重視→市民に公表 |
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日本(現在) | ⇒ 美化+まちづくりの多面的な効果ねらい 行政内部の分業・協業が必要 |
日米のアダプト・プログラムではやはり相違があります。
アメリカではA-A-Hをハイウェイの合理的な清掃・美化手法として位置づけてスタートしました。 ハイウェイの管理者である州の交通局がA-A-Hを導 入し、里親募集、支援、ゴミの処理まで全て一貫管理しています。 日本国内のアダプトのように、関係部署との協業・分業方式とは異なります。 また、合理的な 手法の導入を目的としているため、常に費用対効果を重視して市民に公表しており、清掃業者代わりに利用されていると反発は少なく、 むしろ清掃の協力への感謝となっています。 日本では清掃美化とまちづくりの多面的な効果が狙われており、窓口がいくつかの部署に分かれているため、同じ町内でも分業・協業が必要 となっています。
アメリカと日本でどちらが良いかではなく、現在は日本側のアダプト・プログラムはアメリカと違った形で根付き、 活動していると解釈できます。食環協とし ては今後も日本的な方向に進むことを基本にするつもりです。
2. ボランティアとの接点のマネージ
■ マスコミ経由のPR=道路管理部門が実施
06年・中海テレビ
07年・CATVアンケート
■ 市民感覚(目線)でマネージ
ボランティアとの接点のマネージでは、市民感覚によるマネージ、もう1つはマスコミ経由のPRに参考にすべき点があります。 アメリカでは道路管理者が、 ローカルテレビを含めたマスコミを利用してアダプト・プログラムをPRしています。 日本ではマスコミを地域の環境問題で利用することは難しく、また道路局 や河川課が直接メディアを扱うこともあまりないのが実情です。
その中で、昨年度中海テレビが名乗りをあげて窓口とPRを担っています。ケーブルテレビに対するアンケート調査も実施しましたが、 今後は日本でもマスコミ経由のPRを考えていかなくてはならないと考えています。
3. A-A-H担当者の横の情報交換
『INTERNATIONAL ADOPT-A-HIGHWAY ASSOCIATION』
A-A-Hでは担当者の横の情報交換が非常に盛んだ。「INTERNATIONAL ADOPT-A-HIGHWAY ASSOCIATION」が会議を毎年開催し、数年に一度選出される会長が中心となって担当者が組織を作り、 横の連絡をしあっています。日本でもこうした 組織を作ることも検討したいと思います。