2019年9月
チームみたらい湾の活動が始まったのは、2014年のこと。「アースデイ(地球環境について考える日」のイベントに参加した田原秀敏さんが、「自分にも何かできないだろうか」と考えたのがきっかけです。当初は田原さんが一人で、自分が営む店舗の前に広がる「みたらい湾」の漂着ごみを拾っていました。清掃の様子をFacebookで発信したところ、田原さんの友人を中心に活動に共感してくれる仲間が少しずつ増えていきます。2015年には、光市の「環境美化ボランティア・サポート事業」へ登録。「チームみたらい湾」という名称で、本格的な活動を開始します。
チームみたらい湾は、楽しくごみ拾いをすることをテーマにしています。「大変だな、辛いなと思いながら清掃活動をしていたら、続けるのが嫌になります。活動そのものを楽しむことが、継続のポイントです」と田原さん。昼前から清掃活動をスタートし、ひと段落してお腹が空いたところでバーベキューをすることも多いのだとか。イベントへの参加は、「来年も頑張ろう」というモチベーションアップと、啓蒙活動につながっています。
活動から5年が経過し、チームみたらい湾の活動は広く地域に知られるようになりました。商店会の仲間や自治会連合会、商工会議所のメンバーも活動に参加。次第に「地域の活動の一環」として、認識されるようになりました。みたらい湾の位置する室積地区は、地域住民のコミュニケーションが活発で「地域の人は、みんな顔見知り」という関係なのだとか。そのような地域特性もあり、チームみたらい湾の活動は口コミで地域に浸透していきました。
*チームみたらい湾facebook (外部リンク) https://www.facebook.com/team.mitarai1/
2019年9月15日に開催された清掃活動は、計画当初は100名程度の参加を予定していましたが、地元の小・中学生が学校ぐるみで参加する大規模なものとなり、約250名の方が参加しました。規模拡大のきっかけとなったのは、やはり「地域のつながり」です。2019年8月15日に光市で開催された「全国自然敬愛サミット2019」における室積地区連合自治会の発表の中に、去年チームみたらい湾と室積地区連合自治会が行った海岸清掃が発表されました。その発表を聴講した光市教育委員会の職員が「この活動に、子どもたちを参加させたい」と考え、室積小学校と室積中学校に提案。各学校の校長が地域担当の教師に発案し、児童生徒に参加を呼びかけました。室積小学校では環境学習を積極的に行なっており、小学校3年生は授業の一貫として海岸清掃を行い、小学校6年生は授業で漂着ごみやマイクロプラスチックについて学びます。また室積中学校では、海開き前に全校生徒で室積海岸を清掃し、2月~3月にかけて松の木を植樹するなど、地域の環境について学んでいます。普段から地域の環境について学んでいるため、「清掃活動」や「地域活動」に関心が高い子どもたちが多く、9月15日の清掃活動には中学生約45名・小学生約20名が集まりました。
小・中学生に加え、多くの地域住民も参加しました。室積地区には54の自治体があります。自治体は各世帯に回覧板で活動をお知らせし、室積まちぐるみ協議会も関係者に声をかけるなど、口コミを中心に参加者を募集しました。
通常はみたらい湾を活動場所としていますが、人数が増えため急遽活動場所を3カ所に拡大。チームみたらい湾のメンバーは象鼻ケ岬、地域住民はみたらい湾、小・中学生は虹ケ浜に分かれて清掃することになりました。参加者は、今年度当協会が実施した『“CHANGE FOR THE BLUE”アダプト・プログラム特別助成事業~海と日本PROJECT~』において助成されたビブスを着用し、ごみ袋を手にごみ拾いを開始。おしゃべりをしながら小さいごみを拾ったり、漂着した流木を運んだりしていました。
< みたらい湾>
象鼻ケ岬で小さなごみを拾っていた女性は、象鼻ケ岬に面している中学校の出身。「私が通っていたころは学校にプールが無く、水泳の授業は象鼻ケ岬の海で行なっていました。学生時代の思い出の場所を、少しでもきれいにできればと思って参加しました」と語ってくださいました。同じく象鼻ケ岬で流木を運んでいた男性は、清掃活動初参加。普段は防府市で暮らしているそうですが、お父さんに誘われて参加したそうです。「誘われたのでなんとなく参加しましたが、やりがいがあります」と満足げ。清掃活動は結果が目に見えるので、達成感が大きいそうです。虹ケ浜には、親子で活動に参加した人もいました。「清掃活動のことは、回覧板で知りました。このあたりで海水浴といえば、虹ケ浜。夏休みには、家族みんなで虹ケ浜に泳ぎに行きます。普段お世話になっている虹ケ浜を、きれいにできればと思い参加しました。子どもたちは学校で漂着ごみのことを習っており、いろいろ教えてくれました」。校長先生に直接声をかけられ友達を誘って参加した小学6年生や、「この地域に住んでいるのだから、地域には貢献すべき」と語る中学3年生など、地域活動に対する意識が高いのが特徴的。小学生のころから積極的に地域活動に参加し環境について学んでいるため、「地域清掃は、地域住民が行うのが当たり前」と考える人が多いようです。
< 象鼻ケ岬 >
今回の活動でも多くの漂着ごみがありました。ガスボンベやタイヤなど、昨年の災害が原因とみられる大型ゴミもありましたが、ペットボトルや缶、プラスチックごみもたくさんあります。広島県から流れてきたカキパイプなど、漁具関連のごみもみられました。田原さんが1人で活動を始めたときより、ごみの量は減っています。しかし海岸には、細かいプラスチックや小さいビニールゴミが目立ちました。割り箸やおしぼりが入っている薄いビニール袋は、軽いので風で飛びやすいです。弁当ガラであれば拾おうと思うでしょうが、小さいビニール袋であれば風に飛ばされて海に落ちても、そのままにしてしまうのかもしれません。カキパイプは漂着している間に劣化するのか、広島県の海岸に漂着していたものより、破損しているものが多くみられました。
9月15日の清掃活動は、満潮時間が近かったこともあり約1時間で終了しました。普段より短めの時間設定でしたら、小学生にはちょうど良い長さだったらしく「短い時間で、しっかりきれいになった」と皆さん満足そうでした。チームみたらい湾の活動に多くの人が参加したポイントは、「声掛け」にあります。室積地区は地域行事が多いため、地域活動が活発です。自治会活動の代表者が、自分の所属している団体のメンバーに声を掛け、声を掛けられたメンバーが家族や友人を誘うことで、さざ波のように活動内容が広がります。実際「知り合いに誘われたから参加した」という人が多く、参加者を募る際に地域住民同士の声掛けが重要なようです。
地域活動に参加してもらい、環境に対する意識を高めるためには、小さいころから学び・活動に参加することが重要です。活動をさらに地域に広げるため、室積小学校や室積中学校とも連携して活動を行い、今後は地域内にある他の小学校・中学校にも声をかけてみたいのだとか。チームみたらい湾の活動は自治会や学校と結びつき、光市全体に広がっています。
制度名:光市環境美化ボランティア・サポート事業
導入自治体:光市 市民部地域づくり推進課
URL: http://www.city.hikari.lg.jp/chiiki/volu-suppo/vs-top.html
“CHANGE FOR THE BLUE”アダプト・プログラム特別助成事業~海と日本PROJECT~
URL: https://www.kankyobika.or.jp/adopt/subsidy-for-adopt/apblue