最 優 秀 校
活 動 内 容
桂川、佐田川、筑後川と 3 つの川に囲まれた、のどかな農村地帯に佇む同校。川の恩恵を受ける一方で、大雨が降るたびに幾度も水害に見舞われてきた。特に、1953 年の豪雨は多数の被災者を出す未曽有の大災害だったが、各国の赤十字団や住民がいち早く救援に駆け付けてくれた。当時の児童は、感謝の思いから青少年赤十字団に加盟。川魚を獲って販売するなどして、貯まった資金を募金として寄付した。その精神は現在まで脈々と受け継がれ、青少年赤十字活動(JRC 活動)の一環として、お世話になっている地域へ恩返しを続けている。
その取り組みの一つが、VS(ボランタリーサービス)登校。主に、毎週水曜日の登校時に、ポイ捨てごみの回収活動を全校で行っている。同時に、VS 活動として、授業開始前の朝 15 分間、校区の地域清掃活動も実施。児童は、「気づき、考え、実行する」を合言葉に、地域のために自分が何をしたらいいのか日々考えながら取り組んでいる。1953 年以来 68 年の長きにわたり、親子 2 代、3 代と連綿と続く地域に根付いた活動に成長している一方で、児童が無意識に淡々と行うことが当然のように受け止められていた。それを、地域に頼りにされる尊い取り組みであることを再認識しようと、活動の成果を見える化。児童が回収したポイ捨てごみを日々撮影し、わかりやすく掲示するなど工夫を凝らす。
農業が主たる産業の土地柄で、道路や側溝には、肥料袋やビニールハウスの破片などのごみも目立つ。昨年からは、環境と防災がリンクする形で教育プログラムを一本化している中で、排水溝に溜まった落ち葉やごみが水害の一因となることを知った児童は、VS 活動で、積極的に溝のごみ掻きを行うようになった。
地域コミュニティセンターの羽野勉センター長は、「子どもたちが普段ごみ拾いをしてくれるおかげで、道路が冠水するなど水害が発生しても、その後の片付けが楽になりました。子どもの力のすごさを実感しています」と目を細める。
69 年前、先輩たちが胸に刻んだ「地域への恩返し」。今は、47 名の児童たちが、原点を忘れることなく美化活動に励んでいる。
授 与 式
表彰授与に際し、コメントをいただきました。
◆ 学校長 前田 圭子様
『この地域には、親子三代にわたり引き継がれてきた“奉仕が当たり前の精神”が、地域文化として脈々と息づいています。そのため、本校の環境教育は、学校のみで行っているのではなく、地域とともに、地域全体で行っているものであり、今回の受賞も蜷城地区全体の功績を認めていただけたものであると考えています。同校で育った子どもたちが、今後は地域を守る担い手として活躍してくれることを期待しています。』
◆ 児童代表 井上 千夏さん
『これまで先輩たちが続けてきたVS活動やVS登校など伝統のあるJRC活動を、私たちが引き継いで頑張ってきました。その頑張りが認められて、とても嬉しいです。蜷城小は青少年赤十字に加盟して来年度で70年になります。私たちは、これからも先輩たちの思いを忘れずに、この農林水産大臣賞という大きな賞に恥じない活動を行っていきます。』
◆ 福岡県教育庁 北筑後教育事務所 指導主事 鐘江(かねがえ)貴子様
『この受賞は、皆さんや卒業生が69年にわたりごみ拾い登校を続けてきたことが認められたのだと思います。皆さん1人ひとりに、身近な環境を大切にし、自分にできることは何かを考え、実行に移す力が身についていることでしょう。今後もぜひ“気づき、考え、実行する”取り組みを続けていってください。』
◆ 福岡地連 臼井 章広氏(コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社)
『現在、世界中でさまざまな環境問題が議論されています。人の生活圏で出たごみが海へ流れ出る海洋ごみ問題もその一つです。今回受賞された蜷城小の取り組みは、地域の環境美化活動だけにとどまらず、海洋ごみ問題の解決策の一つだと私は思います。これからも、69年という伝統で培われてきた“奉仕が当たり前の精神”を、皆さんが100年、200年と未来永劫続いていくよう、継承して頂きたいと思います。』