環境美化教育最優秀賞校のみなさんが、異口同音におっしゃる言葉があります。
「当たり前のことを続けてきて、振り返ると数十年経っていた」
時代の流れとともに社会環境や教育現場が変化する今、少子化の波による学校の統廃合、グローバル化に対応した教育改革などへの対応が迫られています。しかし、ここに掲載された5校は、変わりゆく情勢に苦戦しながらも、自分たちの住む地域をきれいにしたいという気持ちは決して揺らぐことなく、長きにわたり美化活動に励んでこられました。
現在、「海洋プラスチックごみ(海ごみ)」が重大な汚染問題として世界で関心を集めていますが、この「海ごみ」という言葉が飛び交うずっと前から地域の海や砂浜、そこに通じる川、山の自然を守りたいとの一心で、ポイ捨てごみを代々回収し続けてきた、それが受賞者たちの姿です。
いっぽうで、少子化の影響は避けることができず、受賞当時の生徒・児童数に比べて、半減した学校が目立つ現実にも目を向ける必要があります。現に「限られた人数の中で、学校がさまざまな対外活動を行うのには限界がある」と複数の環境担当教諭が指摘しています。
そのような学校の深刻な実情を受けて、影となり日向となり積極的に後押ししているのが地域住民です。生徒・児童が主体的に行う環境活動を、住民たちが時に見守り、時にアドバイザーとなる協力を惜しまない体制が整っているのも、最優秀校の大きな特徴です。
「大好きな自分たちの町が汚れるのはイヤだから、ポイ捨てごみを拾う」
こうした生徒・児童の思いや自発的な行動は、住民に感謝されて地域の一員として認められるという連帯感、住民が子どもたちのことをちゃんと見ていてくれるという安心感から芽生えるように思います。最優秀校では「自尊心が高い子どもたちが多い」という話をよく耳にしますが、環境美化活動を通した住民との交流で、その素地が培われていると分析する教諭も少なくありません。そうしたベースがしっかりしているからこそ、子どもたちは学びをどんどん外に広げることができるといいます。これは、地域での環境美化活動を契機に、もっと視野を広げるべく海外に渡った、兵庫県尼崎市立成良中学校の卒業生が何よりもの好例ではないでしょうか。
今後も当協会では、地域の環境美化に貢献されている優れた活動にスポットを当てながら、引き続き環境美化の啓発・推進に努めて参ります。
最後になりますが、今回の取材に際し、お忙しい中でも喜んで時間を作ってくださった最優秀賞受賞の関係者のみなさんに心から感謝申し上げます。