審査委員長
東京学芸大学名誉教授
東海大学大学院客員教授
小澤 紀美子 氏
審査委員を代表して、講評を述べさせていただきます。
本日、最優秀賞を受賞された小中学生の皆さん、並びに学校の先生方や関係者の皆様、まことにおめでとうございます。
私は環境教育に長く携わっておりますが、本表彰事業においても年々、児童や生徒が地域と連携して取り組む活動が増えてきているのを実感しています。全国の都道府県からご推薦いただいた小中学校の取り組みは、いずれも地域の課題に対応し、地域の方々と連携したすばらしい活動や学びでした。
学習指導要領の改訂が行われている今、教育は大きく変わろうとしています。新しい時代に入り、それぞれの地域、あるいは日本、そして世界の課題に立ち向かっていくためには、教科書に書いてあることを飛び越えて、主体的に地域の方々と対話をしながら深い学びにつなげていくアクティブ・ラーニングの視点が重要になってきます。
今回受賞された4校の取り組みは、単に環境美化が教室内で理解されるのではなく、学びが教室を超え、地域の一員として自らの学びに結びついていました。
文部科学大臣賞を受賞した東京都の小学校は、地域行事で散乱する一般ごみに目を向け、地域の方々と連携しごみ対策にあたっています。活動計画を作成し、その結果を近隣の学校で発表するなど体系的に実施しており、学びを地域に広げていました。農林水産大臣賞を受賞した岡山県の中学校は、公的な回収者がいない海底ごみを漁業者と協力して回収し、問題を見える化しながら世界に発信するなど深い学びにつなげています。環境大臣賞を受賞した石川県の小学校は、フェイスブックを通じて川清掃を呼びかけたり、環境新聞を作成し地域に配布したりと手堅く活動を展開し、環境意識向上に一役買っています。協会会長賞を受賞した広島県の小学校は、地域の協力の下、地域資源のホタルや史跡を守る環境美化活動を行い、学校を超えた学びを実践しながら地域の文化や自然を継承していました。
また、最優秀賞受賞校以外でも、地域の具体的課題に着目し、地域の方々と解決しようとする活動が多々ありました。日本の若者は、とかく自己肯定感が低いといわれますが、これらの各校の取り組みは、自信を持って歩みだす大きな一歩となるに違いありません。
3年後には東京オリンピックが控えています。スポーツ選手の根幹は、自分の骨格を作る体幹にあるわけですが、みなさんもまた、ゆるぎない学びのスタイルで自分の骨格を作っています。そして、そうした学びが持続可能な地域社会を作る、まさにEducation for Sustainable Development(ESD)であり、科学的根拠に基づいた「地域が屋根のない学校」となって取り組むことが大事だと考えております。
最後に、本日受賞されました学校の活動が全国に発信され、日本全体に広がることを祈念いたしまして、私の講 評とさせていただきます。本日はおめでとうございました。