審査委員長
東京学芸大学名誉教授
東海大学大学院客員教授
小澤 紀美子 氏
審査委員を代表して、講評を述べさせていただきます。
本日、最優秀賞を受賞された小学生の皆さん、並びに学校の先生方や関係者のみなさま、受賞おめでとうございます。
はじめに、審査のプロセスを申し上げますと、私どもは審査するに当たり、事前に評価基準を4つ設定していました。1つは、独創性と継続性です。「継続は力なり」という言葉がありますが、持続的に行っていることを評価しました。2つ目は、環境美化活動が客観的根拠を持ちながら実践的な学びに結びついていることです。3つめ目は、児童の活動が地域社会と連携している点です。これは、自己を確立していく時に社会性を獲得するために大切な視点で、自分と社会、地域と関わってつながる中で自分を見出し、世界へ目を向ける段階として大事なステップです。そして最後は、活動の広がりです。ただ単に容器をリサイクル、あるいはリデュースという観点からだけではなく、学びが「教室や学校を越えて広がっている」という視点からも評価しました。本日、映像を通して皆さんの話を伺っていて、私は審査の過程で実感した「子どもたちは教科書だけで学んでいるのではない」という思いを新たにいたしました。
文部科学大臣賞を受賞した広島県の小学校は、年間計画のもと1つのテーマを基本に「気づき」から「考え」そして「実践する」プロセスを通して自己を確立し、学びを地域に広げています。それは、まさに文部科学省がいうところの探究的な学びのプロセスで、アクティブラーニングそのものです。農林水産大臣賞を受賞した石川県の小学校では、地域の農業・漁業と環境のつながりを学び、自分たちが地域で行うべきことを工夫しながら情報発信しています。環境大臣賞を受賞した青森県の小学校では、海という地域資源を地元の人々と守るだけではなく、観光などにも活用しており、ふるさとへのまなざしを強く感じました。そして、2014年4月に水循環基本法が制定されましたが、まさに、山に降った雨、川、海という水循環の中での生命の営み、生命のつながりの重要性を学ぶ見事な取り組みを行っているのが、協会会長賞を受賞した徳島県の小学校です。
いま、地域社会では、児童生徒さんたちの「生き方モデル」が見えにくくなっています。しかし、本日受賞された4校では、さまざまな環境美化活動を通して、多様な大人の方たちと関わることで「他者とのつながり」や「多様な生き方」を学びながらモデルを見つけています。学校の校舎や教室を越え、「地域が屋根のない学校」になっている素晴らしい教育だと思いました。
最後になりますが、本環境美化教育優良校表彰を企画いただいた公益社団法人食品容器環境美化協会と、協会を支えていただいている協会を構成する企業にもお礼を申し上げて、審査委員長の講評に代えたいと思います。
本日はおめでとうございました。