審査委員長
東京学芸大学名誉教授
東海大学大学院客員教授
こども環境学会学会長
小澤 紀美子 氏
本日受賞された皆さん、おめでとうございます。昨年に引き続きまして、本年も各都道府県から推薦された小中学校等42校の中から最優秀校4校を選定いたしました。選出するにあたっては、各審査委員が事前に書類を詳細に読み進めながら、主に次の2つの視点から審査させていただきました。ひとつは、環境美化教育に独創的に取り組んでいること。もうひとつは、公共空間の清掃美化や飲料あき容器などのリサイクルを実践し、地域の環境美化の啓発に貢献していることです。そうした観点を踏まえ、審査員が一堂に会して意見交換を重ねた上で、4校を決定いたしました。
とくに、今年は、各校の活動自体が地域の一員として自らの学びに結びついている精力的な取り組みが揃いました。地域と一体化した運動に加え、本継承事業の目的であるアルミ缶やペットボトル回収などの環境美化活動も積極的に実践しており、さらには、学校の授業と連携した「ふるさと学習」にまで発展していることが高く評価されました。また、最優秀賞である大臣賞を受賞したことによって、環境美化活動の広がりがいっそう期待できる要素も加味させていただきました。
先ほど、受賞した4校の活動内容を紹介する映像を拝見しましたが、いずれも地域の歴史や自然遺産を継承するために、先輩や地域住民と活動の意義を共有しながら、地域全体での環境保全の取り組みにまで発展させている素晴らしい活動であることを再認識いたしました。文部科学大臣賞を受賞した「岩手県洋野町立宿戸小学校」のウニの水産学習の様子を拝見している時に、私は、ウニの細胞分裂を1時間ごとに顕微鏡で観察研究していた大学時代を懐かしく思い出しました。教科書で学ぶより、体験を通じた実践的な学びがいかに大切であるかをこうして今改めて感じた次第です。
これらの活動は、具体的な科学的根拠を踏まえるのはもちろんのこと、地域住民と一体感を醸成していきながら、地域が屋根のない学校になることが大切だと思っています。また、学校周辺の地域だけではなく、活動への共感を広く得ることも重要です。いわば愛情の交流ともいえる共感性をもって発信していくことがなによりも大事であると、私も今回の映像を通して知り、よりいっそう深く学ぶことが出来ました。
今回、最優秀賞を逃した各校においても、ウミガメの産卵所の保護や漁港の美化活動、水や命のつながりという具体的な課題に着目した素晴らしい活動を実践されていました。あらためて、生徒児童の皆さん、先生方、地域の方々にお礼を申し上げたいと思います。今回受賞された皆さんの活動が全国に発信され、日本全体に広がり、発展していくことを祈念して私の講評とさせていただきます。